原子力関連広報施設3施設へ見学に ~アトムワールド(休止予定)編~

「一人当たりの排出高レベル放射性物質はその人生においてゴルフボール2個分程度の展示」 (G1 M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6)

原子力科学館を後にして、雨の中をバイクでさらに南下。とは言ってみるものの「アトムワールド」に数分で到着。ちなみにこちらの運営母体は「原子力研究開発機構」。日本における原子力関連の中核とも言える組織でして、JAEAと呼んだ方が分かりやすい方が中にはいらっしゃるかもしれないな。

こちらの広報施設「アトムワールド」が休止されると聞きつけて、今回の原子力関連広報施設3施設見学となった訳だ。無くなってしまったものを後から見る事はとっても難しいからね。

こちらの施設の展示のメインは、ウラン燃料の再処理(含む高速増殖炉)と放射性廃棄物の最終処分に関して。

冒頭の写真は、我々がエネルギーの50%を原子力により得た時に発生する高レベル放射性廃棄物の量を示した物。名刺2/3位の大きさで厚さ1センチほど。もっと身近な単位?にするとゴルフボール2個程度になるということらしい。正直これに関してはノーコメントということで。

前提条件として「サイクルがうまく廻った時」ってのがあるんだろうし。

いきなりちょっと皮肉じみた事を書いてしまったが、本来この施設こそ最後の最後に閉鎖すべき展示内容なのは確かな気がしている。

「高レベル放射性廃棄物容器」 (G1 M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6)こちらは高レベル放射性廃棄物をガラス固化体として固定して、地中に埋める為の最初の容器。冒頭の写真の高レベル放射性廃棄物はこのような容器に入れられて最終処分場へ向かう事になっているが…我が国日本において最終処分場は未だ一箇所たりとも決まっていない。我々は最終処分場を確保する前に、その果実ともいうべき電力部分はすでに享受してしまっている。

「使用済核燃料輸送容器(キャスク)」 (G1 M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6)こちらは使用済み核燃料を集合体のまま再処理工場へ運ぶ為の容器「キャスク」のカットモデル。分厚い鉛で囲われているのはもちろん冷却用の空冷フィンが全周に。この容器を使って夏のツーリングでも通り掛かった青森県の六ヶ所村再処理工場へ、全国各地の原子力発電所から核燃料が運び込まれる。

そうそう、プルトニウム抽出というと六ヶ所村の再処理工場がまずは思い浮かぶ方も多いかと思うが、規模の小さい再処理工場はすでに東海村にあったりする。

「高レベル放射性物質操作用マニピュレーター」 (G1 M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6)こちらは高レベル放射性物質を遠隔で操作する為のマニピュレーター。電気仕掛けで動いている訳では無いようで、ワイヤーで力を伝達している模様。その割には結構軽く動く。慣れない手つきで積み木を積み上げてみたりしたんだが…積み木を3つ位重ねた後の写真を撮っておけば良かったなぁ…(汗)

「減圧室付きグローブボックス」 (G1 M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6)

こちらは恐ろしい細菌が出てくる映画でも良く出てくる減圧室付きのグローブボックス。ただ、体験用にあまりにも沢山のグローブをくっつけてしまっている関係で、最初見た瞬間は前衛芸術か何かかと思ったよ…(汗)

「もんじゅ原子炉カットモデル」 (G1 M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6)こちらは福井県敦賀市にある高速増殖炉もんじゅのカットモデル。核燃料サイクルの文字通り「サイクル」を廻す重要な一端を担っている施設ではあるが、ナトリウム漏れ事故やその際の隠蔽やら何やらで、震災がどうのという話を抜きにして、そもそもが未だに再稼働出来る状態になっていない。

もんじゅの事故が発生したのは、ちょうど俺が社会人になった1995年の冬。原子力工学科がある大学に通っていた事もあり学生オケには原子力工学科の奴もいたりしてまして、大学院に進学する同じオケのバイオリン弾き兼原チャリ仲間だった奴が原子力工学科の大学院に進学したのもこの年の春。こいつも俺と同じく貧乏学生でして、大学院生活を送る為に暮らし始める渋谷への引っ越しをオケの楽器運搬用のトラックで手伝ったりしてやったんだが…

間取りが何と「4畳」。四畳半ですら無い(笑)

アパートと呼ぶよりは屋根裏部屋に住みながら学んでいたそいつが当時言っていたのは「こんなに叩かれるとは思っていなかった…」だった。当時とは比較にならない状況に今現在直面している学生は沢山いるはずで、その学生達の選択する進路がやはり気がかりではある。

「経営陣は気に入らないけど現場の作業員の皆さんは別。」なんて言葉も時折耳にしたりもするが、現場の方々(含む技術者)だって当然人の子だ。こんだけ悪魔の手先みたいな言い方をされ続けていればアホらしくもなってくるだろう。過去に対する責任を本来背負うべき立場にいない若者であればなおさらだ。

俺は結構本気で心配している事柄だったりしているんだが、まぁ人材不足に陥るような事態になったとしても俺は文句を言うつもりは当然ない。何故ならそれが「俺達の選んだ道」であるのだから。「子供の将来が…」などと言いつつ、ちゃっかり自分自身の心配の種を遠くに遠ざけて蓋をするような人間には単になりたくないと言うのが俺の率直な気持ち。別にあなたが「ちゃっかり」な方だとしても別に構わないのでご心配なく。自分の考えが世界の全てなんていう奢った人間になるつもりも毛頭無い。

「通常の食品に含まれている放射能カリウム40の数値」 (G1 M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6)こちらは日常的に口にしている食品に「平常時」で含まれている放射能の量の紹介パネル。「ポテトチップスに400ベクレル」という値が出ている事にビビっている方もいらっしゃるかと思うが、ポテトチップを日常的に1キロも食べているのなら、食生活自体を考え直した方がいいように思うよ。

昨今最大の問題になっている、各種食品に放射性セシウムが発する放射線はβ線という物。これはセシウムが「ベータ崩壊」という物質の変化を引き起こす時に外部に放出される放射線。

一方、放射性カリウムが引き起こすのは「ベータ崩壊」。要するに放射性セシウムと同じくβ線を放出する。残念ながらβ線自体に原子力発電所由来かカリウム由来かどうかの違いは無いので、DNAが受ける損傷の可能性自体にそれぞれの変わりは無い。

敏感な方は知りたくない内容かも知れないが…あなたの毎日食べている食品には原子力発電所の事故以前からそもそも放射能が含まれ、その放射能から発せられている放射線によって日々体内から被爆し続けている。

どの程度の放射性カリウムが実際の食品に含まれているかは、自身の納得できる数値を掲載している情報源を探して頂きたい。週刊誌でもwikiでも大学教授の言葉でも何でもいい。放射性カリウムが食品に含まれているなんて嘘っぱちだ!という物を見つけたならそれでもいい。俺が嘘つきだって言う事で結構です。ま、俺がとやかく言う事では無いと思うので、具体例を紹介する事は控えさせて頂きます。

 

ご近所の原子力関連広報施設3施設を見学しての率直な感想は、やはり夏に通りがかった六ヶ所村で感じた事と似た内容ってところかな。核燃料サイクル自体は、俺の生きている間に回り始める事は恐らく無い。技術的にも感情的にも。そうなってくると高レベル核廃棄物も含め何らかの形で処分をするしか無い訳なんだが、震災瓦礫の受け入れすら進まない現状でそんな物の受け入れをしそうな地域も当然の事ながら無い。

仕方が無いので…稼働中と大して変わらぬ危険な燃料プールに核燃料を浸けたまんま、原発を停止した状態に自己満足ってのが我が国日本らしい落とし所かな。

それでいいんだろ?

原子力関連広報施設3施設へ見学に ~原子力科学館編~

「世界最大の霧箱(クラウドチャンバー)」 (G1 M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6)雨の中わずか数分走ってやってきたのがこちら、日本原子力開発機構のちょうど前にあるこちら「原子力科学館」。何でまた似たような施設がこんなに沢山あるかと言いますと、早い話が運営母体が違うから。こちらの施設の運営母体は茨城原子力協議会になります。

先に書いてしまうと3施設の中で一番「科学館」らしい反面、JCO臨界事故という負の部分の展示があったりもするある意味異色の施設です。

「原子力科学館 ドリームシリンダー」 (G1 M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6)受付で簡単なアンケートに答えた後2階に上ると出迎えてくれるのは科学者のパネル。ま…施設的にどうしたって原子力関連に縁のある方々だけではありますが。

写真で見る限り、アインシュタインが一番頭悪そうだなぁ…なんていう恐ろしい印象を感じたりしつつ、本人の写真の前で舌を出してみたり(笑)

奥のフロアに入ってみると…

「光電子倍増管」 (G1 M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6)どうやら遠く岐阜県飛騨市の神岡にある「スーパーカミオカンデ」展なる催しらしいのだが…解説のパネル2枚に光電子倍増管の展示のみ。何だかショボイ企業の各種展示会の展示みたいな雰囲気が悲しい…(汗)

とは言えこんな所でこいつに出会えるとは思ってもいなかったので、舐め回すようにジロジロ眺めました。

「光電子倍増管」 (G1 M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6)裏側はこんな感じ。うっ…美しい!そう言えばこのガラス部分はどうやって作ってるんだろう?よくガラス細工で「プ~っ」と息で膨らませるやり方だったらビックリだよな。

あぁ分かっているよ…絶対無い…(アホ)

「原子力科学館 アインシュタイン・スクエア」 (G1 M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6)こちらは1Fのメインとなる展示ブース。ちょっとした科学館だぁね。ま、名前に「科学館」と付いているんだから当然と言えば当然なんだが(笑)

「実際の物質付きの周期表」 (G1 M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6)こちらは実際の物質を長めながら、ぐるっと回すとその物質の解説が読めるという面白い周期表。もちろん全部の物質の実物が有る訳ではありません。表の下の方に本物があったりしたら大騒ぎになるよね(汗)

「霧箱の飛跡解説 (α線・β線・宇宙線)」 (G1 M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6)アインシュタインの有り難いお言葉を頂けるコーナー(詩的な面と皮肉屋な面と、天才特有の訳の分からない面があって面白いんだよね)を楽しんだりして、ようやく冒頭の写真「世界最大の霧箱(クラウドチャンバー)」と御対面。

ま、飛跡の見え方の解説を読んでもらえばいいんだが一応俺なりの解説などを。そもそも霧箱ってのは何かというと、通常目に見えない放射線を可視化する装置。もの凄い複雑な仕組みかというと実はそんな事は無く、キンキンに冷やしたアルコールの蒸気(エタノール)を箱の中に充満させておくと、ちょっとした刺激でアルコールは気体から液体に戻ります。

そんな訳で、この霧箱の中を放射線が通過すると、飛行機雲のような飛跡が現れるので目で見る事が出来るという仕組み。じつはこの「可視化する」という仕組み自体は最初の方に出てきた「スーパーカミオカンデ」も同じでして、ニュートリノが50000トンというもの凄い量の中を通過する(飛び込んでくるニュートリノの数が少ないので巨大化してます)時に発する僅かな光を「光電子倍増管」で可視化してます。

「霧箱の飛跡」 (G1 M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6)で、こちらが世界最大の霧箱の様子。これは実際に見てもらうか動画か何かにした方がいいんだろうけれども。

しばらく眺めていたんだが…建物の中という事も有りα線は見えた気がしなかったけれども、β線と宇宙線らしい飛跡は相当な頻度で確認できる。

ここで一つお断りしておきたいのは、この世界はそもそも放射線が飛び交っているんだからあれこれ気にするなという事を押しつけたい訳では無い。宇宙から、地上から、建物から、そしてあなた自身からも放射線が放出されているという単純な事実を御紹介したかっただけの事。

上野の科学博物館の霧箱よりも盛大に飛跡が見えている事に驚かれる方も居るかと思うが…あちらは地下3Fに設置されていて、設置当時は「ここで検出出来るのか?」てな事が心配された位なのでして、ご近所の皆様どうかご心配なさらずに。

「モニタリング・ポスト」 (G1 M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6)霧箱見学の後は、こちらにもあったALOKA製モニタリングポスト&センサ部分のカットモデル。そう言えばこれ位の大きさのセンサを屋根に積んだ1Boxの放射線モニタリングカーをツーリングで何度も見掛けたが、これそのまんま積んでいるんだろうか?

「一家に一枚 周期表」 (G1 M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6)そんなこんなで原子力科学館の本館から別館へ。ふと本館入り口の掲示板を見るとこんな貼り出しが。何々…

「一家に一枚周期表」とな(笑)

「JCO臨界事故解説」 (G1 M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6)別館では1999年9月30日にここ東海村で起きたJCO臨界事故の記録と当時の現場の状況が再現されている。

すでに12年近くが経過している事故なので、その時のあなたの年齢・住んでいた地域によっては知らない内容かもしれない。そんな事もあり、一応俺なりの言葉で簡単に事故の内容を紹介しておきたい。

 

当時俺は東京・目黒にある半導体設計会社で回路設計をしていた。茨城県鹿嶋市に両親が定年を機に移り住んだとはいうものの、茨城県とはほとんど接点の無い日々を送っていた。

「高速増殖炉 常陽カットモデル」 (G1 M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6)当時JCO東海事業所は上のカットモデルの本物、茨城県大洗町にある高速増殖炉「じょうよう」向けのウラン燃料の製造を行っていた。

各種原子炉の実際の商業運転開始までは段階を踏んで規模を大きくする事になっていて、福井県敦賀市にある原型炉「ふげん」(廃炉作業中)、茨城県大洗町にある実験炉「じょうよう」、福井県敦賀市にある原型炉「もんじゅ」はそれぞれウランだけでは無く、プルトニウムを燃料として利用・生成する事で燃料として使う為の原子炉となっている。要するに発電所ではそもそも無い。

 

高速増殖炉「じょうよう」は新しいタイプの原子炉ではあるものの、その燃料自体は通常の原子力発電所向けのウラン燃料と大して変わらぬ同じような物だった。規模が小さい原子炉向けの特注品故、東海村の規模の小さい町工場のような場所でウラン燃料が作られていた。

内職的な単純作業をやった事がある方なら分かって頂けるだろうが、同じ事は一気にまとめてやってしまった方が作業効率がいい。そしてJCOの作業員の方も同じように考えた。

「一度にもっと沢山のウラン燃料を作ってしまった方が早い。」そう思い始めた作業員の方々は徐々に社内規定を破りはじめ…1999年9月30日…ついにウランが臨界をむかえる量をバケツの中に入れてしまった。

10Svを越える放射線を浴びた作業員の方2名が放射線の影響で直接的に亡くなり、臨界状態のバケツの臨界を止める為に現場に向かった方々も多量の被爆をした。この事故により、東海村の方々の一部は避難を余儀なくされ、常磐線は付近の運転を見合わせる事態となった。そしてこの時に初めて俺が知った言葉の一つが「風評被害」。この地域特産の干し芋の売り上げがガックリと落ち込んだというニュースをその後目にした。

 

正直な気持ちを言うのであれば…今となっても亡くなった作業員の方々個人を責める気持ちにはなれない。自らの扱っているものの危険性を自ら調べて理解するのは上昇志向な考えしか持った事のない方にしてみれば当然なのかもしれないが、最後の一線に関する内容についての説明は「くだらない。無駄。」と思ったとしてもなすべき内容ではないのだろうか…

「陽子線治療装置模型」 (G1 M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6)

「PET診断装置模型」 (G1 M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6)原子力科学館の別館にはJOCの事故の展示だけでは無く、「陽子線治療装置の模型」や「PET診断装置」の模型もあったりする。PET診断はガン検診で相当一般的になってきてるよね。

どちらも恐らく誰も反対する事のない放射線の利用方法だと思うが、ここまで「放射線・放射能」を恐れる風潮になっている今日、若い方々がこの分野(含む原子力発電所の廃炉等々の分野)へ飛び込んでいってくれるのだろうか?それだけが心配だ。

最後にちょっとナーバスな気分になりつつ、これまたバイクで数分の「アトムワールド」へ向かいます。

原子力関連広報施設3施設へ見学に ~東海テラパーク編~

「東海テラパークから見える東海第二原子力発電所(手前)と東海原子力発電所(後)」 (G1 M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6)

東海村の原子力関連広報施設の一つ、「アトムワールド」が今月末で休止されるという話を聞きつけて、雨の中をバイクでひとっ走りして「東海テラパーク」「原子力科学館」「アトムワールド」を見学してきた。

一応俺とこの地域の位置的な関わりを説明しておくと、現在運転休止中の東海第二原子力発電所から我がアパートまでは直線距離で10キロは無い程度の近さ。それから原子力発電所に対する仕事での直接的な関わりはないものの、放射線を扱う機器の応用製品に一時期関わっていたので右も左も何も分からない一般人では一応無い事を最初に記しておきたい。

最初にやって来たのはアパートから一番近くにある「日本原子力発電㈱ 東海テラパーク」。ここは運営会社の名前から分かるように東海第二原子力発電所の広報施設となっていて、冒頭の写真からも分かるように東海第二原子力発電所(手前側)・東海原子力発電所(奥側)の施設の同じ敷地内と呼んでしまっていいような場所にある。

そんな立地条件故、入り口で思いっ切り警備員の方に止められたりもするんだが…

「テラパークへ行きたいんです」とはっきり言いましょう。

主に原子力発電所の仕組み等を展示している施設なので、東海村の原子力発電所の歴史や燃料集合体の展示が目をひきます。

「燃料集合体の展示」 (G1 M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6)日本で最初の商業用原子力発電所である東海原子力発電所が営業運転を開始したのが1966年7月25日。その後1998年3月31日まで、今となっては出力僅か16万kWではあるが発電をし、今日を迎えている。

ここで一つ伝えたいのは、原子力発電所の廃炉作業というのは一朝一夕では終わらないという紛れもない事実。日本最初の商業用原子力発電所の廃炉作業(これも日本で最初)は今も続いていて、原子炉建屋の解体作業が始まるのは2014年からの予定となっている。だから冒頭の写真には東海原子力発電所が今日も変わらず写っている訳だ。最初のノウハウ蓄積という意味ももちろんあろうが、建屋の解体開始までには運転停止から実に16年以上を必要としている。

東海原子力発電所の説明を読んでいて、実は「えっ!?」と思った事がある。何と減速材に「黒鉛」を使った原子炉だったという事。

確か黒鉛を減速材に使った原子炉ってのはコントロールが難しく、制御棒を挿入すると逆に出力が上がってしまう正フィードバックが掛かる状態(回路屋さん的には発振みたいな状態)になり得るんでは無かったっけか?ロシアにしか無い物だと勝手に思ってた。

「東海発電所 燃料集合体と黒鉛減速材」 (G1 M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6)こちらはその東海原子力発電所の燃料棒の模型。六角形的な物が黒鉛製の減速材で、その真ん中にあるのが燃料棒。

「燃料集合体と燃料ペレット」 (G1 M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6)こちらは今現在一般的な軽水炉(要するに減速材として水を使ってる)に使われている燃料集合体のカットモデル。ウラン燃料を固めたペレットをジルコニウムの合金で覆っている。福島の原子力発電所で起きた水素爆発は、このジルコニウム合金(ジルカロイ)が高温にさらされた事によって発生した水素によって引き起こされた。wikiからコードごとリスペクトしてきた化学反応式は以下の通り。

Zr +2H2O → ZrO2 + 2H2

何だか久々に、TeXで数式を書いていた学生時代を思い出した。あくまでもリスペクトしただけなんだが…(汗)

何でこんな物を被覆管に使ったのかという意見もあるようだが…臨界を維持できる中性子吸収量と耐熱性その他を考慮した結果がこの物質だったんだと思う。純粋なジルコニウムの融点は1852℃だそうだが、スズその他を添加したジルカロイが水と反応し始める温度はそれよりも低いのは確かだろう。ただ、予期していない水素発生までの温度に至っている時点でまともに制御できていなかったというのも事実なんだろうな。ま、あんまり詳しくないのでこの話はこの辺で。

「モニタリングポスト カットモデル」 (G1 M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6)こちらは空間放射線の放射線量を日々測定しているモニタリングポストのカットモデル。表示されている値にビビらないで欲しい。たまたま反射してしまっていて見にくいと思うが…

「単位はmS/y かつ センサをぶった切った状態の値をそのまま表示している模様…(汗)」

「モニタリングポスト センサ部カットモデル」 (G1 M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6)なんかここいら辺の脇?が甘いよなぁ…と思いつつ館内をさらに見学。(一応センサ部分のアップを。外部に設置される物なのでセンサを温めるヒーターがあって、その温風?を循環させるファンがある模様。3施設全てにモニタリングポストの展示があったが、メーカーは全てALOKA製だった。これは独占というより、過去に渡って真面目にこの手の物を作ってきたメーカーがここだったと言うだけな気がするな。)

「身近な放射線源 クリスタルガラス・ウラン鉱石・コンブ・煙感知器・花崗岩」 (G1 M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6)こちらは身近な物が放射線を出している事を紹介する展示。クリスタルガラス・ウラン鉱石・ワカメ・煙探知機・花崗岩が並んでいて、レバーを廻すとサーベイメータのアナログメーターの針が動きます。

ウラン鉱石は別格として、煙探知機の反応具合が大きい事に驚いた。放射線が怖い方々は家庭用火災報知器を付けない方がいいのかもしれない。個人的には「火災のリスク>>その機器が発する放射線のリスク」な気がするけれども。

そうそう、俺は放射線を浴びるリスクについてはあんまり重大に考えていない。なぜならそんな物とは比較にならない程の危険度を誇るバイクに乗っている人間だから。

「サーベイメータ・遮蔽物・ウラン鉱石」 (G1 M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6)こちらはウラン鉱石が発する放射線を何で遮蔽できるのかをサーベイメータで実際に確認できる展示。遮蔽物としては、紙・木・鉛・コンクリートだったかがあって、さすがに鉛は素晴らしい遮蔽度を誇っていた。ま、鉛自体が人体に有害な物質の一つではあるんだけれども…(汗)

「低レベル放射性廃棄物貯蔵用ドラム缶」 (G1 M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6)こちらは低レベル放射性廃棄物を保管するドラム缶のカットモデル。これは今後防護服とかの大量消費もあって急激に増えそうだ。保管先の確保は出来ているんだろうか?

「燃料集合体乾式貯蔵用キャスク貯蔵庫(模型)」 (G1 M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6)ここ東海第二原子力発電所だけでなく、全国の原子力発電所のキーテクノロジーになるんでは?と個人的に勝手に思っているのがこちら「使用済燃料乾式貯蔵建屋」。途中でも触れたジルコニウム合金で覆われた燃料集合体は、仮にそれが使用済みであろうと温度が上がると危機的状況を迎えてしまう。通常の原子炉等では燃料プールと呼ばれる水(減速材)で満たされた空間に燃料集合体を詰め込んでいる訳だが、この保管の仕方が地震大国の我らが日本では危険だという事は福島第二原発の4号機で実証されそうになった。

水を減速材として使い、尚かつ水を冷却剤として使っている現状は正直…技術屋的にどうなんだ?と感じる。

水を失うと臨界を迎えてしまうかもしれない密度で燃料棒を保管し、その冷却方法としては水しかないという事に対する門外漢な俺なりの無力感。

「燃料集合体乾式貯蔵用キャスク模型」 (G1 M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6)「キャスク」と呼ばれている燃料棒の乾式保存装置の模型がこちら。崩壊熱を長期間発する燃料集合体を格納し、空冷(実際にどの程度の冷却が必要なのかは良く分からんが…)で一時保管を可能にしている。

自分の子供の将来を考えて「反原発」やら「脱原発」をやるのはいいが、俺個人としてはもっと「短期的」な視点で物事を考えて欲しいと思う。仮に原子力発電所の運転が止まったとしても、その危険性自体は恐らく技術的にはほとんど変わっていない。止めた原発が危険から脱却するのには10年単位の時間が必要だし、今から急に日本中が廃炉ラッシュになったとしても、その実現は人員確保的に程遠い。

愛する子供達を守りたいあなた方が主張すべきは、もっと「短期的」な発想であるべきではないですか?そうでないとあなたの愛する子供達の将来には恐らく間に合わないよ。

「フーコーの振り子」 (G1 M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6)…そんな脳内青年の主張を繰り広げながら、片隅にあった「棒を倒していくフーコーの振り子」に癒されるおっさんなのでありました。

そうだよこれこれ!昔は上野の科学技術館のフーコーの振り子もこれと同じ仕組みだったんだよ!地球の自転エネルギーを利用している凄いやつ!

そんな訳で次の見学場所「原子力科学館」へ雨の中バイクで移動開始…