夏休みという事で、世の中の様々な研究施設が一般公開ラッシュ。そんな訳で今日はお隣の東海村にあるJ-PARC(大強度陽子加速器施設が特に有名)の一般公開の見学へ。
バイクで少々走って、見学用シャトルバスの出発地点「いばらき量子ビームセンター」の駐車場へ到着。
今日も暑くなりそうだったので、駐車場で短パンに履き替えまして…(爆)
シャトルバスに揺られる事10分程で施設内部に到着。冒頭の写真は一周1600mの50GeV シンクロトロンに並ぶ巨大な電磁石群。全部で400台程ある四極電磁石と偏向電磁石がパイプの周りを囲んでます。
各電磁石の中間部分はこんな感じ。円周方向のパイプの中を真空にする為のパイプが下の方に繋がっている。このパイプの中を飛んでいくのは陽子(水素原子から周りを廻っている電子を取っ払ったものと言えば伝わるのだろうか…)でして、全長1600mのうち殆ど全ての区間は「正確に陽子の方向を変える」為だけに存在しているそうな。ちなみに重い物で重さ8トンもある電磁石の据え付け位置に許された誤差は何と僅かに±0.1mm。巨大さと繊細さが同居している巨大実験施設なのであります。
直線部分に設置されているこの部分が「高周波加速空胴」という加速器(整備中なので手前側のパイプは外されてます)。この部分を通る度に陽子を加速し、48回(だったと思う)の加速で光速の約99.98%というとんでもない速度(つまりエネルギー)にまで加速します。
全周の長さの割に短い直線区間を抜けると再び陽子をぐるっと曲げる区間が始まる訳だが、単に陽子をグルグル廻してても意味が無いのでもちろん取り出し口が存在する。ここがその取り出し口の始まり部分。鉄道で言う所のポイントみたいな部分だね。
こちらが陽子の方向を分岐させるキッカー電磁石。幾つも並んでまして、少しずつ陽子の軌道を変えていきまして…
一番手前はビームダンプ行き。これはそうだなぁ…インクジェットプリンタの排インクタンクと言えば伝わるかなぁ…?家庭用のインクジェットプリンタだと、印字ヘッドが端っこに行った所に要らないインクを吸い取る為のスポンジがあったりすると思うんだけど、そういう方面行きってな感じかな。
そのお隣は再びグルッと廻る周回コース行き。
そして一番奥がニュートリノターゲット行き。295㎞先の岐阜県神岡町にある、スーパーカミオカンデへ向けてニュートリノを打ち出す装置へ向かうラインだ。
上から見るとこんな感じ。奥の方から陽子が飛んできて、ここで3方向に分岐するのが良く分かる。
こちらは手前側から奥へ陽子が飛んでいく方向の写真。一番左のニュートリノターゲット行きのラインだけ装置が違うのが良く分かる。
見学ルートはニュートリノターゲット行きのラインの脇を通っていきまして、いきなり機器の種類が変わる。これは液体窒素の冷却ラインがあるから超電導磁石だと思うけど…違うのかな。
こちらは液体窒素の更に上をいく冷え冷え具合の超臨界ヘリウムで冷却されている超伝導磁石部分。それにしても物凄く小さな陽子相手に対してのこのデカさがエネルギーの大きさを物語る。
こちらは今まで見学してきた50GeV シンクロトロンの入出場口に設けられているゲートモニター。原子力発電所の作業員の方がこのような装置を通って施設の外へ放射能を持ち出して(意図しない付着等で)いないか確認している場面をTVのNEWS等で見た方も多いかと思う。
シンクロトロンという施設は、陽子に高エネルギーを与えてターゲットに衝突させる事によって各種観測用のニュートリノや中性子を作り出す事を目的としている。しかしながら軌道を外れてしまった高エネルギーを持った陽子が周囲の金属等に衝突してしまうと、その金属が「放射化(要するに安定した物質が放射能に変化する)」してしまう為、シンクロトロンを含めJ-PARCの多くの観測装置のエリアは放射線管理区域となっています。大きめの病院にあるCTスキャンの部屋の中とかと同じだ。
という訳で、通常運用している時(今は2ヶ月間程の定期点検中)は放射線従事者である研究者の皆さんは線量計(バッジ)を常時着用しているとの事。ちなみにJ-PARCのシンクロトロンは陽子の利用効率?94%(だったと思う…)の高効率を誇っているそうです。電磁石設置の精度の高さはこういう面でも重要な要素との事でした。なるほどなるほど。。。そりゃそうと、またしてもシンクロトロンの外周並に記事が長くなってしまったよ…そんな訳で…
To Be Continued.