水戸芸術館のパイプオルガン修繕工事見学ツアーに行ってきた

「水戸芸術館」 (G1 M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6)

震災で大きな被害を受けた水戸芸術館だが、ホールなどの各施設は7月30日に再開したものの、エントランス正面に設置されているパイプオルガンは今も修復工事の真っ只中。

パイプオルガンの修理が始まったニュースを聞いた時に「見てみてぇなぁ…」と思っていたら、何と「パイプオルガン修繕工事見学ツアー」なるものが開催される事を聞きつけて、速攻で電話予約を入れたのであった。

見学ツアー開始1時間程前に会場に到着したので、クロークに上着と荷物を預けて「清川あさみ|美女採集」なる、女優さんの写真に手芸で使うようなキラキラした具材で昆虫採集的なイメージを付加した展示を見学開始。

CDのジャケットなどを手がけられている方だそうでして、普通の写真とは全く異なる独特な世界が展開中。ここの所続けざまに書いている気もするが、美術に対しての感性に劣等感を感じている俺みたいなのが感想を書くのも何なんだが、ライトと自分の位置関係によってきらめき方が変わっていくので、原版というかこの展示会のような場で実物を見ると印象が違うんじゃないかなと思ってみたり。

それにしても堀北真希、美人だなぁ…(煩悩)

見学ツアー開始の時間になったのでロビーに集合。残念ながら写真撮影は禁止だったので今回写真は無しです。

まず最初はこのオルガンの制作者で、今回の修繕工事の取りまとめもされている「株式会社 マナ オルゲルバウ」の代表「中里 威」さんから今回の震災による被害の状況、パイプオルガンの歴史や全体の構造の説明、今回の震災を受けての更なる耐震化の説明がありました。

全くもってパイプオルガンの事前知識が無かったので、パイプオルガンの原型は紀元前240年にすでに存在していたとの話には驚いた。肩掛け式のアコーディオン的な物だったらしい。それから何本もパイプが落下してしまった(幸い怪我人は無かったとの事)のを受け、仮にパイプが台座から外れても落ちないように上部からつり下げる安全策を追加しているとの事。

パイプオルガン構成図

この後は実際にパイプオルガンの裏側から鍵盤のある演奏台の前で説明を聞きます。裏側を見て改めて驚いたのは、鍵盤の操作を伝える伝達手段が全て木で出来ている巨大な装置であると言う事。鍵盤や音色を変える「ストップ」というノブの押し引きは、薄い木の板で伝達(木にとって強度のある引っ張り方向)されていきます。

写真は無いけれども頂いた説明資料があるので、パイプオルガンの構造をこちらを使って少々御説明。

演奏台の正面にある一番小さなパイプ群がブルストヴェルグ。センター上方とその両側に並んでいるのがハウプトヴェルグ。左右両端の巨大なパイプがペダルだそうな。説明を聞いている時、俺はちょうど左のペダルの一番長いパイプの前に居たんだが、パイプのでかさもさる事ながら、歌口も物凄くでかかったよ。

そしてここで衝撃の解説が。何とパイプの材質は「スズ75%・鉛25%」の合金との事。

えっ…ほとんどハンダと同じじゃねぇかっ!(驚)

パイプの作り方は、まずハンダもどきの合金で一枚板を作った後で板金で徐々に丸めていき、後ろ側をハンダで留める…

何と、ハンダをハンダでハンダ付けするらしい…(凄)

様々な音色を鳴らす事の出来るパイプオルガンだが、発想的には全てのパイプが鳴る状態(このパイプオルガンでは3283本)から鳴らさないパイプを作る事で音色を変えるという、いわゆる引き算的な仕組みになっているそうだ。そのため、音色を変えるノブの事を「ストップ」と呼ぶそうだ。なるほどなるほど。

そうそう、オルガン制作者は鍵盤の数やストップの数(音色の数)にはこだわりというか意識が強く働くんだが、パイプの本数自体は普段あんまり気にしていないらしい。だから自分の作ったオルガンを前に「このパイプオルガンには何本パイプがあるんですか?」と聞かれても、「あれっ?何本だったっけ?」となってしまうそうな(笑)

以前から気になっていた「歌口の位置が曲線を描いたりしているのは、純粋にデザインの観点なんですか?」という俺の質問に、「はい、単にデザインです!」と明確なお答えを頂いたりして個人的な疑問も解消。そうか…やっぱりデザイン的なものだったのね。

パイプオルガンの前での解説の次は、 「中里 威」さんの息子さんによるパイプの構造の解説。パイプオルガンの音を作っているのは大きく分けて2種類あって、歌口のついている金属で出来たパイプ(フルート的な構造)と、木で出来た共鳴管に埋め込まれたシングルリードの歌口(サックスとかクラリネット)の2種類。

フルート的な方は温度とともにほぼ揃った音程のズレをしてくれるらしいが、リードの方はそうもいかないので都度細かな調律が必要との事。大変だなぁ…。また、パイプオルガンの設計では音階を作るにLogが必要なので数学を学ぶ必要があるというお話や、今現在ドイツでマイスターとしての修行をされているお話など非常に興味深かったです。手製の木製の共鳴管を目にして「今すぐにでも家具屋さんになれそうですね?」と仰っていた方の質問に、「実は逆なんです。私は家具製作の勉強をした後に今のパイプオルガンの修行についています。」との会話もありました。木工の修業先は高山だったりしたのかな?聞いておけば良かったよ。

結局、予定の40分をはるかに超える時間色々と御説明を頂きました。お二人の中里さんはじめ水戸芸術館の皆さん、貴重な体験を本当にどうもありがとうございました!

パイプオルガンの修繕工事は3月完了を目指して作業されているとの事。修理を終えたパイプオルガンでの演奏が今から待ち遠しいですね!

*「株式会社 マナ オルゲルバウ」の町田にある工房では、来年4月頃に制作中のパイプオルガンの仮組を行うそうです。これは是非とも拝見させて頂きたいですな!

東京大学フィロムジカ交響楽団の定演に行ってきた

東京大学フィロムジカ交響楽団定期演奏会・武蔵野市民文化会館

この週末は東京にやってきた。土曜日から泊まりがけで来たものの寝坊&青春18きっぷ利用なので、実のところ夜に南千住の激安飲み屋で飲んだ位しかやった事が無いので記事は無し。

上野動物園のパンダはいつになったら見に行けるんだろうか…(涙)

で、翌日の今日はツイッターで団員の方の開催情報を聞きつけて、東京大学フィロムジカ交響楽団の定演にやってきたのであった。会場は武蔵野市民文化会館。最寄り駅は三鷹駅だったんだが時間的にちと余裕があったので、お隣の吉祥寺駅のアーケード街を散歩したりしつつ会場へ。三鷹駅の近くには横河電機の大きな工場があって、ここが本社工場との事です。何となく日立市と工場と駅の位置関係が似てますな。

何でまたはるばる東京までアマチュアオケの演奏会にやってくる気になったかというと、プログラムの曲目が気に入ったからというのが大きいです。

  • ワーグナー 「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第一幕への前奏曲
  • ドヴォルザーク 交響詩「水の精」
  • ブラームス 交響曲第2番

特にサブメインの「水の精」を生で聴く機会ってのは滅多に無いので「これは聴かねば!」という事ではるばるやってきた次第でございます。ブラ2ももちろん大好きだしね。

演奏会の感想をブログで書くのはちと自分には荷が重すぎるんですが、それぞれの曲の自分なりの感想などを。

 

「ニュルンベルクのマイスタージンガー」

この曲は金管吹きにはたまらない一曲ですな。冒頭の導入部分が終わり、主題が始まってからの金管の重厚なハーモニーはワーグナーならでは。いやぁ羨ましい限りでした。また途中木管のちょっとコミカルな掛け合いの部分のクラリネットの方の上手さが印象的でした。ワーグナーの歌劇の前奏曲は比較的演奏時間が短いだけでなく、旋律がわかりやすい曲が多いので、クラシックを聴き始めの方にもお薦めです。

交響詩「水の精」

マイスタージンガーに続き、これまたトロンボーン大活躍の曲でした。ソロトロンボーン吹きのクリスチャン・リンドベルイのCD「トロンボーンの犯罪」の解説によると、「トロンボーンで旋律を吹く事・トロンボーンで16分音符を吹く事…等々」は犯罪という定義になってますので、1stトロンボーンの方は完全に犯罪者でしたな(笑)いやぁ…パンフレットのパート紹介でも触れられていましたが、今回の演奏会に向けての練習でトロンボーンパートは相当練習したんではないでしょうか?

序曲がモーツアルト、サブメインが軽めの組曲、メインがブラームスやらベートーベンだったりすると、吹く音符の数が泣きたくなる程少なかったりしますからねぇ(笑)昔良く、演奏会の開催費を音符の数で割って音符一つあたりの値段を出したりしてました。その時毎回悩むのが…

スラーで繋がった全音符は一つとして扱うべきか否か…それが問題だ!(アホ)

仕舞いには「tacetも音符なんじゃね?」とか言い出す始末だったりしてまして(笑)おっと話が脱線してしまいました。東京に足を運んでホント良かったです。トロンボーンの1stの方

Bravo!

ブラームス 交響曲第2番

先に言ってしまいますと、この曲もトロンボーンの皆さんにBravo!です。4楽章の最後の最後にバストロ・2nd・1stトロンボーンの見せ場が有るんですが、皆さんバッチリ決めてました。1stの方はアルト持ち替えだったので正直厳しいんじゃないかと思っていたら、最後はテナーバスのまんまでハイD決めてましたネ。実は会場の私の右前方にOBの方なのか、明らかにハイDを待ちかまえていた方がいらっしゃったんですが、決まった瞬間に後ろに仰け反っていました(笑)私も同じ気分でしたな。

そしてこの曲で一番凄いと思ったのは、何と言っても1stホルンの女性の方。1楽章・2楽章で歌舞伎とかなら「いよっ!待ってましたっ!」と掛け声が掛かりそうなソロが有るんですが、プレッシャーに潰されることなく吹き切ってしまいました。いやぁ…ホントに凄かった!

楽団の皆さん、素敵な演奏をどうも有り難うございます!

アンコール ワーグナー 歌劇「ローエングリン」第3幕への前奏曲

最後はこれまた豪快にローエングリン。のだめカンタービレのベト7ばりのベルアップで締めくくりでした。

そうそう、トロンボーンパートの皆さん…これは次回の演奏会のプログラムを

「モーツアルト・ガラコンサート」とかにする布石かも知れませんよっ!(笑)

MTM07&東京文化会館グッズなど

「Make:マグカップ・トロンボーンの歴史麻袋・トロンボーンしおり」

今回のMTM07巡り&上野散歩で買った物など。

マグカップはお馴染みMake:マグカップ。自宅での電子関連の読書や電子工作中にコーヒーでも飲んでみたくなる一品。

左下の藍染めは、MTM07の会場に出店されていた「かわうそ兄弟商會」さんの新書用ブックカバー。ご覧のように何やら数式が染め抜かれていますが、こちらは数学界の中でもっとも偉大で美しいと呼ばれることもある「オイラーの公式」で「θ = π」が成り立っている場合の「オイラーの等式」です。

オイラーの公式は、電気・電子回路の世界でも、交流での解析等の基礎となっている重要な公式でして、実際の生活の中でも実は使われてます。

試しにブックカバーに挟んでみている本は、ブルーバックスの「ゲーデル・不完全性定理」。「数学という学問自身が内包する完全な世界故」の矛盾や限界について書かれている本なはず。イマイチ自信が無いのは…まだ序章しか読んでいないから(汗)

実はこの本を読むきっかけというのが個人的には面白くって、会社の忘年会で見られないTV映画「天空の城ラピュタ」の「バルス」という滅びの言葉を、シータがパズーにどうやって伝えたのかを考えると、ゲーデルの不完全性定理に辿り着く!というHPを見たからだったりします。

…確かにどうやって伝えたんだろう…筆談ならOKなのか?それが駄目だとすると…おばあちゃんから滅びの言葉を受け継ぐ時にも問題が生じるはず…

…ま、理系人間はこんな感じに毎日楽しく生きてますと言うことで…(汗)

 下にある麻袋&右上のしおりは上野にある東京文化会館のグッズ売り場にて。自分のやっていたトロンボーンという楽器は物凄く単純な仕組みでして、長さを長くすると低い音が出て、短くすると高い音が出るという当たり前っぽく感じる仕組みを楽器にしたもの。その長さを右手の伸ばし方で変えるというアナログ極まりない楽器です。

クラシック界ではイマイチ地味な存在(交響曲に登場してきたのがベートーベンの運命以降)だったりするので、思わず買ってしまいました(笑)

学生時代のオーケストラの指揮者がここ「東京文化会館」を拠点に活動する「東京都交響楽団」出身だったこともあり、本番のトラ(応援の演奏者)の方の楽器、ハープやらコントラファゴットやらを受け取りに伺った事が何度もあるので、実は結構身近に感じているホールだったりしてます。

50周年、おめでとうございます!